クリーンディーゼルについて

クリーンディーゼルとは

 日本国内では、ディーゼルエンジンの排気ガスによる環境汚染を問題視して制定された「ディーゼル車規制条例」によって、排気ガスの排出基準を満たさないディーゼル車は、対象地域での登録はもちろん、運行・乗り入れも禁止されました。
(対象地域は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、大阪府、兵庫県 ※2023年1月現在 大阪府は乗り入れ制限を2022年4月1日をもって廃止)

このような厳しい排出ガス規制に対応できるディーゼルエンジンとして、平成22年排出ガス規制(通称ポスト新長期規制)に適合したものがクリーンディーゼルエンジンと呼ばれています。
現在新車で購入できるディーゼルエンジン車はすべてクリーンディーゼルの車両です。また、この流れは日本国内だけに限らず、ヨーロッパにおいても「ユーロ」規制によって厳しい排出ガス規制が課せられています。

クリーンディーゼルの仕組み

では、クリーンディーゼルエンジンはどのようにして厳しい排出ガス規制をクリアしているのか。
それまでのディーゼルエンジンとの大きな違いはコモンレールシステムという燃料噴射システムです。
これによって高い噴射圧力による燃料の霧化の促進と正確なタイミングで適切な量の燃料噴射が可能となりました。

コモンレールシステムによって大幅に排出ガスはクリーン(黒煙の減少)になりましたが、それだけでは規制値をクリアできません。そこでマフラーに黒煙等を補修する装置が取り付けられています。これが排出ガス後処理装置と呼ばれるものであり、メーカーによってDPD、DPR、DPFなどと呼ばれています。

排出ガス後処理装置(DPD、DPR、DPF)の構造と作用

ディーゼルエンジンの排出ガスと排出ガス後処理装置(DPD、DPR、DPF)には大きく2つの働きがあります。

  1. すす(PM)の捕集と燃焼(再生)
  2. NOの捕集と還元

※DPDは Diesel Paticulate Defuser(ディーゼルパティキュレートディフィーザー)
DPRは Diesel Paticulate active Reduction system (ディーゼルパティキュレートアクティブリダクションシステム)
DPFは Diesel Paticulate Filter(ディーゼルパティキュレートフィルター)の略です。これらの名称は異なりますが働きはほぼ同じものです。

1.すす(PM)の捕集と燃焼(再生)

イ.排気ガスの後処理装置は触媒と格子状になったフィルターで構成されています。

エンジンから出た排出ガス中の残留燃料分は触媒で酸化還元されます。(燃やされます。)
また、排気ガス中のすす(PM)はフィルターに捕集されていきます。

ロ.イの工程が進むとフィルターが目詰まりしてきます。それをフィルターの前後に設置された圧力センサーの数値の差(差圧)によって判定します。設定された数値より差圧が大きくなると「再生」の工程に移ります。

ハ.フィルターで捕集されているすすは燃料の燃え残りであるため、高温にすることで焼き切ることができます。この作業を「再生」と呼びます。
フィルター部分を高温にするために触媒を利用します。先ほど排出ガス中の残留燃料分を触媒で燃やす(正確には酸化還元)と説明しましたが、その熱を利用します。エンジンの燃焼とは全く関係のないタイミングで燃料を噴射(ポスト噴射)してあえて廃棄ガス中に多量の燃料成分を含ませることによって触媒を加熱します。
(ポスト噴射を行わず触媒に直接燃料を噴射できるインジェクターを備えている車種もあります。)

その場合は正常な状態でおよそ600℃〜650℃に達します。その熱によってフィルターにたまったすすを焼き切ることによって、改めてすすを捕集する状態になります。

以降、イ〜ハのサイクルを繰り返します。

2.NOxの捕集と還元

 NOとは窒素酸化物の総称であり、実際にはNO2、NO3、N2Oなど窒素と酸素の複数の化合物を表すものです。NOは性状が人体や環境に有害なものであるため大気開放が望ましくありません。そのためクリーンディーゼルでは捕集と還元処理を行なっています。
システムは2つの方式があります。NO吸蔵還元触媒を利用したものと尿素SCR方式です。

NO吸蔵還元触媒方式は文字通り、NOを吸蔵、還元できる触媒をしており、すすの再生のタイミングでNOを無害なNO2(窒素)とN2O(水)に還元します。
尿素SCR方式では、尿素水(アドブルー)を高温の排気管の中に噴射してアンモニア(NH3)を生成し触媒化学反応によってNO2(窒素)とN2O(水)に還元し無害化しています。

尿素式はエンジン運転中は常に尿素水(アドブルー)の噴射をしています。そのため万が一尿素水(アドブルー)のタンクが空になってしまうとエンジンの始動ができなくなってしまいます。

NOの処理能力の関係からNO吸蔵還元触媒方式は乗用車や小型トラックまでしか採用されておらず、環境基準適合の観点から今後は尿素SCR方式に移行していくものと思われます。
※すすの発生とNOの量は、実はトレードオフの関係になっており完全燃焼に近づくと燃焼温度が上がりすすの発生は減りますがNOの発生量は増えてしまいます。逆に燃焼温度が下がるとすすは増えるがNOは減ります。

その特性から尿素SCR方式の方がNO処理能力に余裕があるためすすの再生に対して有利な制御が可能になります。また、補足ですがマツダのSKYACTIVE-Dはエンジンの圧縮圧力を下げることによってNOの発生を抑制しているためNOの規制にかからないため、すす(PM)のみの後処理を行なっています。

再生の種類

自動作成:通常の再生です。ドライバーは何の操作もせずに車両が自動で行う再生です。再生中はアイドリング回転数が若干高くなりますがほとんど気づかないうちに終了します。

手動再生:何らかの原因で自動再生ではPMを処理できない場合にメータ内の警告灯が点滅します。そうなった場合に再生ボタンを手動で押しておこなう再生です。警告灯が点滅状態では一定の距離しか走行することはできません。再生中は走行できないため邪魔にならず危険のない場所に停車して再生ボタンを押す必要があります。正常な状態では、再生完了まで20分ほどかかります。

強制再生:自動再生、手動再生でも再生がうまくいかない場合、また手動再生(警告灯点滅状態)を無視して走行し続けた場合に警告灯が点灯に移行します。
こうなってしまうとディーラーや整備工場に持ち込んで専用のテスターを接続しなければ再生できなくなってしまいます。これが強制再生です。
警告灯が点灯になるとエンジンが出力制限モードになりますので力がなくなり坂が登れなくなったり、速度が出ない状態になります。なるべく強制再生モードにならないように手動再生の警告は無視せず、再生作業を行わなければなりません。

エンジンオイルの違い

クリーンディーゼルでは触媒とフィルターへの影響の観点から、専用の規格が設定されています。日本国内規格では小型ディーゼル用のDL-1、大型ディーゼル用のDH-2があります。(ヨーロッパ車は別の規格があります。)

まとめ

クリーンディーゼルエンジンとそれまでのディーゼルエンジンの違い

  1. コモンレールシステムによる高圧で精密な燃料噴射制御
  2. 排気ガス後処理装置(DPD、DPR、DPF)の有無
  3. エンジンオイルの違い(国内クリーンディーゼルはDL-1、DH-2を使用)

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